失恋がしたい(昨日)

   恋愛について考えるとき、いつも考えていた光景がある。大人になって、バーカウンターみたいなところで友だちに『好きだったのに!』みたいなことを嘆いている夢。文字にするとちょっと変質的な気がするけれど、わたしの中では恋の連想の先にいつもそれがあった気がする。どんな人と付き合いたい? デートするならどこがいい? みたいに、子供らしい恋バナをしているときとか。

 

    わたしはバーカウンターみたいなところでキャリアウーマンみたいな格好をしていて、机に突っ伏してさっき終わった恋の話をしている。たとえば2、3年片想いしていた人に恋人が出来たとか、何かこっぴどい振られ方をしたとか、そういう類の話。

 

   それで大人になってそういうことがあったかというと、そんなこともなかった。お酒が飲めるようになってからは安居酒屋ばかりに行っていたし、わたしはリクルートスーツしか持っていない。大体ちょっと、大人のイメージが浅薄過ぎて引く。スーツとバーって。

 

   これは別に、大人になったらこういうことがしたいと思っていたという話ではなくて、ただ頭の中にあったイメージというだけだから、別段オチはないんだけど。ただ2日前くらいにこのことを考えて、頭の中で挫・人間の『一生のお願い』が流れていた。

    久しぶりにゴットタンを見たらVtuber月ノ美兎がエンディングテーマを担当していて、これ選曲は誰なんだろうなって考えていたから、考えた順番は曲が先だったかもしれない。『一生のお願い』は何回か前のEDに選ばれていた。

    この曲→ https://apple.co/3EoJRwA 

                  https://spoti.fi/3C8eLHA  

 

   先週のゴットタンでは腐り芸人セラピーという好きなコーナーをやっていて、みなみかわというピン芸人ノブコブ徳井さんが治癒していた。フルポン村上以来のドキュメンタリー回だと思った。プライドが高いって難解。重い愛はいつも重荷になる。無理解でも守る覚悟がなかったらすぐにヘドロになっちゃう。お前の愛はどんな感じ? 大事だからって言い訳はかつてほんとだった分だけどんどん悪質になって、引くに引けなくなって、本質から遠ざかって全部汚してしまう。だけど『作ることに関しては一番』なのに人間として大切なものが欠けているだけで、成功できないのってちょっとつまんないよな、とも思った。愛が遠いのは大体自分のせい。

 

   話を戻して『一生のお願い』はバンドの中でもポップな曲で、明るくて勢いがあって、そこに繊細な詩が散りばめられている曲だった。ひとつ前のアルバムの『恋の奴隷』をもっと聴きやすく、切なさを上げて編集したような。アルバムの中では『ソモサン・セッパ』と並んで表題曲だから、バンドの狂と純を二分して表しているのかな、と思っていた。30秒だけでちゃんと耳に残るキャッチーで、だけどあくまで強い音。この曲は暗いけどポップだった。わたしはポップな恋がほしかったのかもしれないと思った。暗いけどぽっぷ。そういうものに数多く惹かれてきた。だけど現実はもっとぬめっていて思ったことの8割は口に出さないし、全部打ち明けることが正義ってわけでもない。なんとなく朝になって、揉めていたこともなかったように喋り始めたりとか、なんとなくいっしょにいただけがその内きらめいて抱えたい重さになったりもする。そういう曖昧な声に出さないで変わる関係は美しいし、日常って感じがする。

   そもそも人間関係の取り決めをするときに形式ばったことをするのって、ちょっときもい。言わなくても分かってよ、と思うし、ぷろぽーずだってされたら笑っちゃうかもしれない。よろこびはまた別としてね。なんかストーリーの決まったロールプレイングゲームみたいで、わたしたちの現実はどこへ?

 

    恋愛相談に関する話をよく覚えているから、単に失恋フェチなのかもしれない。お笑いライブの一幕で、囲碁将棋の文田さんが当時エリートヤンキーの西島さんからがっつり恋愛相談を受けたって話とか、LLR福田さんの唯一の恋愛沙汰を聞いたっていう当時ミルククラウンの竹内さんの話だとか。これは萌えっていう、なんか分からないけどぐっとくる感情に近い。ごくプライベートなことを吐露すること、言いにくくてだけど聞いてほしいことを溢すこと。こんなに好きなのにどうにもならないんだよ! って泣かれたら落ちちゃうかも。吐露フェチなの?  

   

    ヤンキーが好き。フィクションのヤンキー、または概念のヤンキー。モヤモヤを抱えきれないで外見を派手に武装したりとか、威張り散らかして突っ張ったりするの、かわいいなと思う。あとはなんか、仲間と愛と喧嘩、って分かりやすい愛羅武YOUでできているのも、いい。うざったい陰鬱や遠縁の言い回しもなくて、大事にするものが決まってて、いつもビビットカラーを身につけている。かっこいいと思う。きしんだ茶髪ロング、豹柄のジャージ、パチモンのクロックスはピンク色で、携帯は見えないくらいデコっているような、そういうケバケバしい光の強さ。

   拳と拳で戦って勝ったり負けたりしたい。

   そのとき飲んだポカリスエットが何よりも美味かったとか後から語ってみたいし、大事にする先輩に仁義を通したりしてみたい。絶交したはずの唯一無二の親友と、仲直りがしたい。もちろん屋上でね。

 

    要するに分かりやすい愛。振り返って青かったなとかいうそれ。ちゃんと区切れる感情、過去に置いていくための感情装置。歌にできる自分語り、エピソード。ありえないフィクションにしかないような、安っぽい人生経験。そういうぽっぷさがほしい。サビで歌えるような恋がしたいのだ。わたしにはもうあの人だけだったのにとか、呟いてみたいしさあ。

 

 

   これは去年一番観てよかったってMV